行き先のない道しるべ

アクセスカウンタ

zoom RSS ためしてガッテン お湯の凍結時間 Part2

<<   作成日時 : 2008/08/02 11:39   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 0

 なんかためしてガッテンの例の効果が再び話題になっている様子。中でも大槻先生の対応について、様々な批判があったようです。それを受けて、大槻先生が実験をしました。

2008年7月31日 (木) 7月 第5回 【ムペンバ効果、再び】
「実験もしないで簡単に否定するとは、物理学者としてけしからん!」
とか
「NHKは10回以上実験して実証しているそうではないか!」
とか、たくさんのご批判をいただきました。
なかには感情的に『馬鹿』呼ばわりされました。
NHKの権威なのでしょうか。

こんな物理法則、あるいはムペンバ効果とやら、熱力学の基本法則からありえませんので、前回私は強く否定したのです。
つまり、実験してみるまでもないのです。だから、大抵の物理学者は関心がないのです。このムペンバという言葉を知っている物理学者もほとんどいません。

私は、わが国唯一の物理科学雑誌『パリティ』の編集長を務めて23年になります。この間、ただの一度もこんな効果が話題に取り上げられたことがありません。
確かに海外の科学関連の啓蒙誌にヘンな現象として記載されていたことは知っている編集委員もいたかも知れませんが、完全無視の態度でした。

ところで、実に馬鹿馬鹿しいとは私も思いましたが、前回のブログの記事に対する反響が大きく、
「実験やれ!」
「実験やったか?」
という批判がありましたので、重い腰をあげました。

実験は3とおり。

製氷皿(プラスチック製)、それぞれ6区画のもの2個
ペットボトル2本
まな板(プラスチック製)、2区画
70℃のお湯、17℃の水(いずれもバンクーバー市の水道水)。

まず、1.の実験。

それぞれ2個の製氷皿にお湯と水の印をつけ、お湯・水をそれぞれの区画に満杯に入れた。
朝8時15分、実験開始。
冷蔵庫(冷凍室)に製氷皿を入れた途端、お湯の方から激しい水蒸気が上がる。
9時7分、水の製氷皿の6区画のうち、5区画が結氷。お湯の方は全ての区画で未結氷。
9時21分、お湯の方も全て結氷。水の方の残った1区画も結氷。
結論、『70℃のお湯は、17℃の水よりも遅く結氷した。』 つまり、NHKの放送とは逆だった。
2.のペットボトルでの実験も同じ結果。

3.の実験。

まな板(プラスチック製)の1区画に17℃の水、別の区画に70℃のお湯をこぼし、冷蔵庫に入れた。
15分後、いずれも結氷。しかし、お湯の方が固く結氷した。これは、NHKの主張に沿っている。
結論、板に垂らしたお湯は同じように垂らした水より、早く結氷。
やはり、NHKの主張は正しくありませんでした。
ただし、板に垂らしたお湯については、その通りでしたが、これは板の上に広く広がり、極端に蒸発熱が奪われ、また薄いお湯の層は、すぐ下地の板の温度になるためなのです。
尚、水を入れた製氷皿の6区画のうち1区画だけは、なかなか結氷せずお湯の結氷と同じ程度の時間がかかりました。
これは、例外的な様々な要因を考えるきっかけになります。

この種の実験には、たくさんのパラメータが関与する可能性があります。

蒸発熱・・・
これは、冷蔵庫の温度とお湯の温度に関係。また、お湯と空気の接触面積に依存する。蒸発熱によって熱は奪われ、温度は低下する。
過冷却・・・
0℃になっても結氷しない。
成分変化・・・
お湯にすると水道水に溶けていた気体が蒸発して、成分が変わる。
対流の違い・・・
お湯のまわりの対流は、激しく効率よく冷気があたる。
17℃の水の製氷皿の6区画のうちの1区画だけがなかなか結氷しなかったのは、上のうちのどれかの要因があるのでしょう。
『実験したら、NHKの言うとおりだった。』というレポートもあるのはあるのですが、これは、偶然上の要因があったと考えられます。

繰り返し結論を申し上げます。
『冷蔵庫で氷を早く作りたいなら、一旦、お湯にしてから冷やせ!』
とは、迷信です。
ムペンバ効果は、相転移の物理の新しい発見でもなく、まして新しい法則でもありません。



 なるほど。言ってることはよくわかるし、NHKの放送内容に問題があることは重々承知。しかし、以前のエントリー「7月 第2回 【ムペンバ効果】」「実験もしないで実験したかに放送したのならば、ヤラセです。オカルトほどでなくともこれはれっきとした『ブードウ科学』です。」とまで言ったからには、このような言い訳は通用するまい。
 続いて、大槻先生の実験内容について見てみる。

 実験1・2
 まあ、予想通り。こうなるのが当たり前ですわな。私だってそう思う。

 実験3
・まな板(プラスチック製)の1区画に17℃の水、別の区画に70℃のお湯をこぼし、冷蔵庫に入れた。
・15分後、いずれも結氷。しかし、お湯の方が固く結氷した。これは、NHKの主張に沿っている。
・結論、板に垂らしたお湯は同じように垂らした水より、早く結氷。


 問題はこの実験3で、これを見る限り、NHKの放送内容が実際に再現できる可能性を示唆していると思う。しかし、考察が足りないんじゃないの?

>ただし、板に垂らしたお湯については、その通りでしたが、これは板の上に広く広がり、極端に蒸発熱が奪われ、また薄いお湯の層は、すぐ下地の板の温度になるためなのです。
尚、水を入れた製氷皿の6区画のうち1区画だけは、なかなか結氷せずお湯の結氷と同じ程度の時間がかかりました。
これは、例外的な様々な要因を考えるきっかけになります。


 この考察は、お湯が早く氷になることを何ら説明していない。
・薄く広がったお湯が気化熱で冷える。
 これはわかる。
・素早く下地の板の温度と同等になる
 これはどうだろう。水の熱容量は決して小さくない。その水があっという間に冷えるというのは、いかがな物だろう。それなりの時間がかかると考えた方が自然だ。

 上の2つをそのまま信じたとしても、お湯が早いことの理由にはならない。同等レベルというのがせいぜいだろう。にもかかわらず、実際はお湯の方が早かった。この理由が問題なのでしょ。

 で、大槻先生は以下のようなパラメータを挙げて、この原因を考えているようだ。

・蒸発熱・・・
これは、冷蔵庫の温度とお湯の温度に関係。また、お湯と空気の接触面積に依存する。蒸発熱によって熱は奪われ、温度は低下する。
・過冷却・・・
0℃になっても結氷しない。
・成分変化・・・
お湯にすると水道水に溶けていた気体が蒸発して、成分が変わる。
・対流の違い・・・
お湯のまわりの対流は、激しく効率よく冷気があたる。


 これらのパラメータはお湯が先に凍ることの説明になってない。順番に見ていく。

・蒸発熱(最近はこういうのかね?私の頃は「気化熱」といったけど)
 これは水と同等の温度に下がる説明にはなるが、水もまた蒸気は出してるよ(レベルは違うけどね)。私が習った頃の沸点(温度)の説明はこうだ。

蒸気圧と大気圧が同じになる温度
(蒸気圧の方が大気圧より高くなると水は蒸発する)


何もお湯に限らず、水という奴は常に蒸発しており、沸点以下だと気化と同等のレベルで液化が起こっている。それ故「水」という形態を維持している。レベルは違うが、気化熱による影響は17℃の水も受けてるよ。それ故、お湯の温度が早く下がることの証明にはなっても、早く氷になる説明にはなるまい。温度低下のの速度が止まらないというなら話は別ですが。
 温度低下が始まるとその速度が維持されると言うことだろうか?だとすると、お湯を冷凍庫に入れて10分くらいしてから外に出しても温度低下が続くのでしょうか?私にはわからん。

・過冷却
 これもまた、水・お湯共に起こりうる現象なので、お湯が早いことの証明にはならん。

・成分変化
 これは凝固点降下とかを考えればあり得るな(最もそんなに大きな変化はないと思うけど)。何で湯冷ましを使わなかったの?そうすれば、同等の条件で比較できたろうに。また、沸騰させることで成分変化が起きて凝固点が上昇するなら、湯冷ましが水よりも早く氷になるということになるが、それでもいいのか?朝、お茶を飲むためにつくったお湯の残りを湯冷ましにしておけば、水より早く氷になるというわけだ。NHKの説明不足を補足しているのでしょうか?

・対流
 これを考えるとすると、実験1・2と実験3の整合性がとれなくなる。対流ならば、板に垂らしたお湯よりも製氷皿のお湯の方が起こるだろう。にもかかわらず、実験1・2では水の方が先に氷になったのでしょう。おかしいよ。


 以上のことから、NHKの取り上げ方には問題がある(再現性が低い)。それには同意します。が、このようなことの有無についてこのblogの説明にはとうてい納得できない。もうちょっとしっかりしてよ。専門は違うとはいえ、物理の教授なんでしょ?

 大槻先生曰く、世界中の物理学者がこのことを知らないとのこと。まあ、知らなくてもいいことだしね。ただ、現象は無視できない。本当に大槻先生のおっしゃる通りなら、世界中の物理学者は硬直した思考に終始して、新しい発見などできはすまい(小さい発見はあるかもね。大発見は無理だろう)。

 私は科学というのは普遍性を求める物だと考える。その流れで今までの自然科学は発展してきた。しかし、この普遍性という奴は、時としてイレギュラーを産むことがある。その際に「これはイレギュラーだ」で思考停止していては、発展はあるまい。このイレギュラーは何なのか?このイレギュラーの普遍性は何なのか?これを調べていくことこそが、真の普遍性の探究になると思う。
 たとえば、人間の体で考えれば、癌というのはイレギュラーだ。正常な細胞が癌を産む。現象としての癌があるにもかかわらず、これを「イレギュラーだ」「ありえない」といってしまってたら、そこでお終いだ。しかし、かつての学者たちはそのイレギュラーに普遍性を求めようとした。その中に山極勝三郎先生がいる。

山極勝三郎(1863-1930)
東大教授、病理学
人工癌実験を成功させノーベル賞候補になった人
(ノーベルは寄生虫説の人に取られた)


この方、兎の耳にコールタールを塗り続けて、癌を発生させた。これを元に「刺激説」を唱え、癌生成のメカニズムを解明しようとした人です。こういう考え方をした人がいなければ、今の癌治療にはつながらないだろう(もちろん、山極先生だけではないけど)。
 イレギュラーにはイレギュラーの普遍性があり、その普遍性を求めていくのが科学者じゃないの?大槻先生にこういう考え方があるようにはとても見えない。NHKの放送手法に問題があるのはわかるが、現象を否定しては「科学の死」だよ。

 先のエントリー「ためしてガッテン お湯の凍結時間 」で挙げたキリスト教会に科学があった時代の「コペルニクス」「ガリレオ」のような物理学者はもう出ないのだろうか?そうは思いたくはない。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
"ムペンバ効果"をめぐる論争(NHK「ためしてガッテン」)
さきほどYahoo!のトップニュースで見たのだけれど、2008年7月9日放送のNHK「ためしてガッテン」で、「お湯のほうが水より早く凍る」という内容が紹介され、これに早稲田大学名誉教授の大槻義彦氏がブログで「実に馬鹿馬鹿もの」と反論している。 ...続きを見る
make myself just as ...
2008/08/02 15:03

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
ためしてガッテン お湯の凍結時間 Part2 行き先のない道しるべ/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる