泉大津市長の暴挙? 名誉院長って何だ?

 久々に医療について書いてみる。

読売:大阪・泉大津市立病院、院長ら医師6人が一斉退職
診療科一部休止
 大阪府泉大津市の市立病院(215床)で、飯田さよみ院長(59)(糖尿内科)ら内科医6人が6月末で一斉に退職することがわかった。市から名誉院長への就任を打診された飯田院長が「第一線からの引退勧告」と受け止めて反発したのが発端とみられ、同じ大学出身の5人も相次いで辞表を出したという。病院側は代わりの医師の確保に奔走しているが、血液内科の診療が中止に追い込まれるなど、影響は避けられない見通し。

 飯田院長は2004年9月に院長に就任。3月中旬、神谷昇市長が名誉院長への就任を打診したところ、飯田院長は辞意を示し、説得にも応じなかったという。

 神谷市長は「一段高い立場で経営と診療にあたってほしいという考えだったが、思いがずれてしまったようだ」と説明。一方、飯田院長は取材には応じていない。

 その後、4~5月にかけて、飯田院長と同じ大学出身の内科医5人も「一身上の都合」として相次いで辞表を提出した。

 市立病院は内科、外科など12科あり、今秋には地域周産期母子医療センターが開設する。医師は約50人。内科には五つの診療科があり、医師は飯田院長を含めて15人。
6人は、血液、腎臓、糖尿の各診療科におり、血液内科、腎臓内科の医師がいなくなる。

 病院側は4月以降、複数の大学に協力を求め、糖尿内科の常勤医1人を確保。腎臓内科も少なくとも1人の外来応援を受けられる。ただ、血液内科は医師が見つからず、受診中の100人以上の患者は近隣の病院などに受け入れてもらう。また、糖尿内科、腎臓内科ともこれまでより診療回数が減少する。

 大久保富夫事務局長は「患者への影響を最小限に抑えるため、引き続き医師の確保に努めたい」としている。

 同府阪南市の市立病院でも昨年11月、給与歩合制度の見直しなどを市が打ち出したことに医師9人が反発し辞表を提出したが、後任の医師を採用するなどして診療を続けている。

(2009年6月12日 読売新聞)



 さてさて、最近ありがちな報道ですな。まあ、内容としては、市長が病院人事に口出して、医師の退職という阪南と同じパターンだ。順に見ていきます。

>飯田院長は2004年9月に院長に就任。3月中旬、神谷昇市長が名誉院長への就任を打診したところ、飯田院長は辞意を示し、説得にも応じなかったという。

 ん~。何でこういう事を打診したんだろう?これがわからん。院長を変えねばならない理由とは何だ?そこん所がこの記事からは読み取れない。この院長は就任以来、様々なことを精力的にこなしてきた人のようだ。後段にもある周産期母子医療センターの開設にも一役かった人のようだ。センターがこの10月に開設するというこの時期に名誉院長(相談役みたいなもんかな。肩書きだけで何の権限も無しというところか?)に据えようという市長の政治センスが理解できない。産科壊滅の危機を何とか乗り越えられたのもこの院長のおかげじゃないの?「のど元過ぎれば熱さ忘れる」という事かな?
 こんな事されりゃ、やめると言い出すのも無理はない。ピーンと張り詰めた糸が切れる様な感じかな?

>神谷市長は「一段高い立場で経営と診療にあたってほしいという考えだったが、思いがずれてしまったようだ」と説明。一方、飯田院長は取材には応じていない。

 市長のこんな言葉でごまかされるような人はいないんじゃないの?名誉院長がどうやって診療はともかく「経営」に当たれると言うんだろう。もし、本当にそうできるなら、次期院長こそいい面の皮だ。院長になったにもかかわらず、前任者が口出ししてくるのを黙って受けなきゃならん。市長が本当にそんなことできると考えているのなら、現市長は名誉市長にでもなってもらって、新市長を選べばいい。市長理論では名誉市長は経営に当たれるそうだから。
 また、「思いがずれた」とのことだが、どちらかといえば「(市長の)思惑が外れた」という方が正しいような気がする。上に書いたように、現院長の功績を考えるなら、この時期に事実上の降格をなされるのはおかしい。どうしてもというなら、理由がいるだろう。この記事からはそれが読み取れない。
 また、院長が取材を受けないことを書いているが、この記事を読むだけで、受ける必要がないことがわかる。こういう報道姿勢では、取材なんぞ受けない方が正しい。うっかり受けたら、言葉尻をとらえて何書かれるかわかったものではない。奈良大淀の報道を見てりゃ極めて健全な対処法といえる。大体、院長が取材を受けないと書く紙面があるなら、市長は何故このような方針を打ち出したのかを、張本人の市長に聞け。そうすれば、ちったあ、全貌が見えてくるだろう。

>その後、4~5月にかけて、飯田院長と同じ大学出身の内科医5人も「一身上の都合」として相次いで辞表を提出した。

 これはまあ、理解できなくもない。院長がセンター設立に向けて動いていた以上、その他医師も同様の努力をしていたものと思われる(院長一人でできる事じゃないだろう)。その結果、市長の評価が「名誉院長」という名の降格では、やってられんわな。この市長の大なたがいずれ自分たちに向くと考えるのは至極当然のこと。
 読売新聞としては、同じ大学出身で「医局が悪い」みたいな方向を出したいんだろうけど、そもそも他の大学からの派遣は無いんじゃないの?阪大が院長を派遣しているからこそ、阪大からの医師が来る。他学からの派遣は先ず無いだろう(そういう意味で、市大から産科医を引き込んだこの院長の手腕はすごいと思う)。
 学閥がいいとは言わんが、「人は3人集まれば派閥ができる」というくらいのもんで、現状では仕方のないことだ。これと同じようなことは医療機関のみならず、数多く見られると思う。もちろん、それを改善するべくがんばるのはいいが、現状を無視しても何の対策にもならない。
 また、学閥を悪いと言いたいなら、市長の考える「新院長」は何処の人かな?実に興味深い。それが学閥を考えないものなら、すばらしいけどね。

>市立病院は内科、外科など12科あり、今秋には地域周産期母子医療センターが開設する。医師は約50人。内科には五つの診療科があり、医師は飯田院長を含めて15人。

 私が気になったのは、この件。これが集団退職の直接の原因だろう。
 内科は5分野。そこに15人とある(院長込み)。となれば、平たくすれば、一分野に3人ずつ。これで365日24時間回しているわけだ。8時間労働なら、3交代で休みなし。もちろん、休みがないことはないだろうから、それなりの休みを取れば、それなりに勤務がきつくなる。よく言われる36時間労働なんかが無いと、休めはしまい。
 この勤務をこなしながら、センター設立にむけ様々な努力もしてきた。その院長に対する評価が「名誉院長」だ。そりゃ怒るわ。で、院長が抜けるとなれば、その分勤務に穴が開く。残った人にその分負荷がかかるというわけだ。
 患者の命も大事だけど、自分の命も大事だよ。身を削ってというのにも限度というものもある。まして、医師の努力をこのような形で報いるような首長のいる病院で、身を削ること自体ばかげてる。さっさとやめて、身の振り方を考えるのは自然なことだ。

 こういう報道がなされると、「患者の命はどうなってもいいのか」という批判が出る。しかし、ちょっと待て。いままで、身を粉にして働いてきたその実績を無視してないか?今までも何度か書いてきたが、医師の労働環境は普通に考えれば、明らかに違法状態にある。違法状態で有りながら、「患者のために」働いてきたのが、この院長であり、その他の医師だ。報酬なら他にもいい条件の病院があるだろう。勤務態勢もいい条件の病院はある。にもかかわらず、この医師たちはこの病院で働いてきた(もちろん、医局人事もあるんだろうけど)。市長の方針は、その医師たちの気持が折れるに十分なものだと思う。
 また、「患者の命」に関して言えば、何も泉大津市は絶海の孤島じゃない。ちょっと行けば、いくらでも病院はある。それこそ「代わりはいくらでもある」のだ。そういうところに行けばいい。遠くなるかもしれないが、それ以上の問題ではない。電車・バス・タクシーどれを使っても結構。遠いから不便というのは問題ない。他市から市民病院に通う人も多かろう。その条件が課されるだけだ。

 また、「職務放棄だ」との声も聞こえる。これまた、的外れ。職務はちゃんとこなしてる。やめるにしても期日を決めて、それまでは勤めることは確実。患者をそのまま放り出すわけではない。
 やめた後についても、市側が代わりの医師を見つけてくればいいものを、代わりが見つからないもんだから、現在の医師が他院への紹介状を書いているとか。市側の不手際の後始末を医師がしているといってもいい。市側の職務怠慢とは言わんが、こういう事(院長降格)をすればこうなることくらい予想できなかったのか?他市の事例もあっただろうに。ちっとは想像力を働かそうよ。頭は生きてる間に使おう。

 今回の件も、尾鷲・阪南に続く「舌禍」事例といってもいいのかもしれない。公立病院で働く医師をどう思っているのかを端的に示す事件ですな。

市長ならば、医師の使い方を学んだ方がいいんじゃないの?

医師にこういう対応をするということ自体、市民の健康への配慮が足らないといわれてもしかたないぞ。泉大津市が「舞鶴」になるか、「柏原」になるかは、市長および市民の意志にかかっている。

市民・患者が選ぶのは、果たしてどちらだろう?

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